◆◆西京project用ブログ◆◆腐向け・女性向け表現アリ◆西京参加者様に限りリンクフリー◆
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◆◆本編:白蓮院桜華◆◆
―――平穏とは唐突に壊れるもの。
今日はちょっと気分を変えてメトロなんてどうだろう、という何気ない選択が、日々の『これから』を少しずつ変えてゆく。
その何気ない選択肢で巻き込まれてしまったのが、地下鉄の脱線事故。
衝撃は一瞬だった。気づけば左半身と右の手に鈍く熱い痛みと、周囲のすすり泣きやパニックに陥った者の叫びに、だんだんと状況が解ってきた。
恐怖はたやすく伝染する。桜華とて妖怪だが、精神構造は人間の少女に近い。思考からいつもの楽天的なものは消え、悪い癖だと解っていても最悪の展開が脳裏をよぎり、ひ、と喉奥から悲鳴をあげそうになった時。
「――皆さん! 落ち着いてよく聞いてください…!!」
凛とした声がそれを止めた。
「僕は特高警察の者です! この状況で、いつ助けが来るか解りませんが――」
とっこう、けいさつ。桜華の唇が、音なく言葉を紡ぐ。
「どうか信じてください…! 僕がっ…」
まっすぐで懸命な言葉だ。人々を悲観に染まらせまいとする、誠実な。
「僕ら……特別高等警察が、必ず全員無事に助け出しますから……!!」
この状況で安易に希望を持つことはできない。
けれど、彼の言葉を信じよう、という心の動きが人々に起きる。彼――ノルニル・ニーアは、手持ちの菓子を車両にいる人々に分けていったのだ。警察なら当然の行為とはいえ、即座の判断、言葉、行動は何よりも人の心に響く。
「…手。怪我をしているんですか」
「少し擦り剥いてしまって。あの、お願いがあるのですが…」
例外なく、桜華の元にも彼は来てくれた。特に酷い左手に、カバンからハンカチを取り出して巻くのを手伝ってもらい。少し楽になった手に、ノルニルはお菓子を持たせてくれる。
「痛くて開けられなかったら、言ってくださいね」
「はい、ありがとうございます。…あの」
「? なんでしょう」
首を傾げるノルニル。愛らしさすら感じるその仕草に、桜華の不安がほぐれ。
「特高の方、なのですね」
くす、と笑う。
「私、特高の方に友人がいるのですよ」
「そうなんですか」
「ありがとうございます。私は、大丈夫ですから」
「ええ! …では!」
太陽のような笑顔を残し、ノルニルは他の乗客の下へ向かう。
「…ぃ、た…」
会話で気は紛れていたが、怪我はすぐには治らない。鈍く響く痛みと不安に泣きそうになるのを堪えながら、桜華はぼんやりと上を見た。
…今頃、かなちゃん素知らぬふりして新聞見ながらラジオかな…
貰った菓子は手が痛む為食べられない、が、誰かの優しさが形として手の中にあるのが嬉しい。
…警察の人が励ましてくれたのですよ、れんちゃん。
…れんちゃん。
桜華は思い出す。蓮爾が、特高を目指した頃を。無駄に前向きで、馬鹿で、一生懸命な姿勢で、彼はその道を選んだのだ。
『僕は対等になりたいからな』
妖怪である自分よりも、亜人である奏海よりも弱い人間の蓮爾。彼には、そのどちらもが遠く見えたのだろうか。
「馬鹿なのですよ…」
彼の答えは彼だけのもの。
彼の道も彼だけのものだ。
奏海が半ば隠居のように駄菓子屋を継いだ意思も、彼だけのものだ。
「…男の子ってホント、相談なしに勝手に自分の最善を見つけますよねー…」
そんな風に進む彼らを見ていると、置いていかれる身は寂しい。いずれ置いてゆく身だけれど。
「でも、れんちゃん…」
『警察が必ず助けに行きます』
れんちゃんも、頑張っていますか。
無理しないでいるといいな。
頑張りすぎて、怪我してないといいな。
身体能力の向上だか反射神経を養う為だかで、桜華が張り巡らせた鉤糸を掻い潜る特訓をして。大抵は蓮爾が囚われて終わりだが、つい先日それは打ち破られた。
『見たか!』
得意げに彼は笑う。
馬鹿じゃないですかね、服とかひっかけて格好悪いです。それなのに何が『見たか!』ですか。
れんちゃんも、かなちゃんも、成長していってるのは知ってるのですよ。ずっと見ていたのですから。頑張ってるのを知ってるのですから。
「……れんちゃん馬鹿だから無理してないといいなあ」
無理してるんだろうなぁ、馬鹿だから。
「……うん」
ほんと、馬鹿なんだから。
痛む手をさする。…僅かに、痛みが薄れていくような錯覚。妖怪の身は、ゆっくりと傷を癒していっている気がした。おそらく幼馴染の馬鹿を思い出して、馬鹿がうつって、意識が前向きになれたからだろう。
――桜華はぼんやりと上を見る。
いつか幼かったころ。成長しない身体で、家の庭を眺めていた。柵を超えて入ってきたボールを、落ちてゆく様子も眺めていた。
どうしようかな、と戸惑っていると柵の向こうに男の子が二人。あの子たちのだろう、桜華はボールを取りに行って、渡そうとして。
「遊ぼうよ!」
ありがとうより先に遊ぼうよとか初対面で言われるあたり、子どもでしたよねぇ。
戸惑いはしたが桜華は反射で頷いてしまって、それから今に至る仲だ。
遊ぼうよと言ったのはどちらだ。両方かもしれない。どうでもいい、二人が友達なのに変わりはない。
「ふふ」
痛みより可笑しさが。
また会ったら昔を思い出したと話そう。
奏海は嫌がりながら思い出の補足をしてくれるだろうし、蓮爾は笑いながらとぼけるだろう。
彼らの背を、自分はまだ眺めていたい。
桜華は上を見上げている。
静かに。今は傷の回復を待つ。
また、彼らと会う為に。
* * * * * *
◆◆エピローグ:佐々浦奏海◆◆
――一度バランスを崩した日常は、なかなか元には戻らない。
いつもやって来ていた幼馴染の馬鹿二人が、西京メトロ事故以降、ぱったりと姿を見せなくなった。
連絡までよこさねえとはどういうこった。馬鹿だから仕方ねえのか。
くそ、と舌打ちをする。ラヂオから定期的に流れてくるのは事故の報道だ。
あれから二、三…何日たった。カレンダーを見るとたいして経っていないはずなのに、奏海にとっては一週間か一ヶ月も過ぎたように感じる。
りいいいいいいん。駄菓子屋ではなく家の方の呼び鈴が鳴った。
――電話かよ。
奏海は舌打ちひとつを残し、乱雑にスリッパを脱ぎ、居間に続く障子を開け放つ。
「はい。佐々浦――…。…白蓮院の。ご無沙汰しています」
電話は白蓮院の家、桜華の母からだった。電話の向こうの声、連絡できなくてごめんなさいね、と謝る品の良い婦人の声は、泣き疲れて枯れていた。
ざわり。奏海の心のうちに、考えるのを避けていたものがよぎる。
「…桜華が…!?」
「…でね、大変だったのですよ」
「そうか。僕も大変だったぞ!」
某病院の待合室。桜華の包帯姿が痛々しいが、表情は和やかだ。
桜華はメトロ事故の怪我が完治してはいないが、歩ける程度には回復したため、病院側が漸く退院許可を出した。蓮爾は単に救出の手伝いに回っており、今は休憩中なので桜華の様子を見にきたらしい。
この数日ろくに寝ていないのと、救出の手伝いで疲れているだろうに。桜華は蓮爾の気遣いに、言葉にはせず感謝していた。
「奏海になかなか連絡できないのがもどかしいな」
「そうですねえ」
大規模な事故故、情報は正しいものも誤ったものも錯綜して雪崩れ込む。故に、安易に外部と連絡がとれない。公務員の悲しい勤めだ。だが桜華は帰宅許可が出たのでさあ知らせようと意気込んだら、駄菓子屋"木須"には誰もいなかった。
「…奏海はどうしてるんだろうかな」
蓮爾がため息をつくと、桜華があ、と小さく声をあげる。
つられてそちらを見れば。
「……、……」
普段の甚平ではなく、一般的な社会人のような姿格好でありながら、常に外さぬ彼の個性――グラサンが相変わらず成人男性notカタギという印象をキメてしまう。
普段の彼らしくもなく、肩で荒く息をつき。
普段の彼らしくもなく、グラサンを外した。
――色素の薄い、黄金の瞳。眉間の皺がよりいっそう深くなる。
彼の三白眼は桜華と蓮爾の姿をとらえると、荒れた呼吸を整えもせず、ずかずかと躊躇い無く向かってくる。
――すごく怒ってる…!
桜華と蓮爾は思わず身構えた。ああいう奏海はたいてい怒っている。
「…おい、」
「「はい!!」」
反射で返事したら声が上擦っていた。仕方が無い。こちらは蛇に睨まれたカエルなのだ。
「蓮爾、…桜華」
がばと広げられる腕。殴られるかと二人は目をつぶると、
「…無事か」
奏海に、まとめて抱きしめられていた。
「……無事かよ」
掠れた声。ぎゅう、と力を込められるが痛いとは言えない。
…不安だったのですね、かなちゃん。
桜華は奏海の腕にわずかに甘え、
「ははは奏海どうしたたった数日会ってないだけで、あっ痛!痛い、痛、ちょ、ギブ!ギブだ奏海!」
場を和ませようとフザケた蓮爾を、奏海は器用に締め上げる。
…れんちゃんほんと空気読まないっていうか読んでてもこうっていうか。
「かなちゃん」
「……んだよ」
「ただいま、です」
「おかえり」
いつ、昔話をしようかな。
とりあえずれんちゃんの顔色がアレなんでかなちゃんちょっと落ち着きましょうね。
◆◆本編:白蓮院桜華◆◆
―――平穏とは唐突に壊れるもの。
今日はちょっと気分を変えてメトロなんてどうだろう、という何気ない選択が、日々の『これから』を少しずつ変えてゆく。
その何気ない選択肢で巻き込まれてしまったのが、地下鉄の脱線事故。
衝撃は一瞬だった。気づけば左半身と右の手に鈍く熱い痛みと、周囲のすすり泣きやパニックに陥った者の叫びに、だんだんと状況が解ってきた。
恐怖はたやすく伝染する。桜華とて妖怪だが、精神構造は人間の少女に近い。思考からいつもの楽天的なものは消え、悪い癖だと解っていても最悪の展開が脳裏をよぎり、ひ、と喉奥から悲鳴をあげそうになった時。
「――皆さん! 落ち着いてよく聞いてください…!!」
凛とした声がそれを止めた。
「僕は特高警察の者です! この状況で、いつ助けが来るか解りませんが――」
とっこう、けいさつ。桜華の唇が、音なく言葉を紡ぐ。
「どうか信じてください…! 僕がっ…」
まっすぐで懸命な言葉だ。人々を悲観に染まらせまいとする、誠実な。
「僕ら……特別高等警察が、必ず全員無事に助け出しますから……!!」
この状況で安易に希望を持つことはできない。
けれど、彼の言葉を信じよう、という心の動きが人々に起きる。彼――ノルニル・ニーアは、手持ちの菓子を車両にいる人々に分けていったのだ。警察なら当然の行為とはいえ、即座の判断、言葉、行動は何よりも人の心に響く。
「…手。怪我をしているんですか」
「少し擦り剥いてしまって。あの、お願いがあるのですが…」
例外なく、桜華の元にも彼は来てくれた。特に酷い左手に、カバンからハンカチを取り出して巻くのを手伝ってもらい。少し楽になった手に、ノルニルはお菓子を持たせてくれる。
「痛くて開けられなかったら、言ってくださいね」
「はい、ありがとうございます。…あの」
「? なんでしょう」
首を傾げるノルニル。愛らしさすら感じるその仕草に、桜華の不安がほぐれ。
「特高の方、なのですね」
くす、と笑う。
「私、特高の方に友人がいるのですよ」
「そうなんですか」
「ありがとうございます。私は、大丈夫ですから」
「ええ! …では!」
太陽のような笑顔を残し、ノルニルは他の乗客の下へ向かう。
「…ぃ、た…」
会話で気は紛れていたが、怪我はすぐには治らない。鈍く響く痛みと不安に泣きそうになるのを堪えながら、桜華はぼんやりと上を見た。
…今頃、かなちゃん素知らぬふりして新聞見ながらラジオかな…
貰った菓子は手が痛む為食べられない、が、誰かの優しさが形として手の中にあるのが嬉しい。
…警察の人が励ましてくれたのですよ、れんちゃん。
…れんちゃん。
桜華は思い出す。蓮爾が、特高を目指した頃を。無駄に前向きで、馬鹿で、一生懸命な姿勢で、彼はその道を選んだのだ。
『僕は対等になりたいからな』
妖怪である自分よりも、亜人である奏海よりも弱い人間の蓮爾。彼には、そのどちらもが遠く見えたのだろうか。
「馬鹿なのですよ…」
彼の答えは彼だけのもの。
彼の道も彼だけのものだ。
奏海が半ば隠居のように駄菓子屋を継いだ意思も、彼だけのものだ。
「…男の子ってホント、相談なしに勝手に自分の最善を見つけますよねー…」
そんな風に進む彼らを見ていると、置いていかれる身は寂しい。いずれ置いてゆく身だけれど。
「でも、れんちゃん…」
『警察が必ず助けに行きます』
れんちゃんも、頑張っていますか。
無理しないでいるといいな。
頑張りすぎて、怪我してないといいな。
身体能力の向上だか反射神経を養う為だかで、桜華が張り巡らせた鉤糸を掻い潜る特訓をして。大抵は蓮爾が囚われて終わりだが、つい先日それは打ち破られた。
『見たか!』
得意げに彼は笑う。
馬鹿じゃないですかね、服とかひっかけて格好悪いです。それなのに何が『見たか!』ですか。
れんちゃんも、かなちゃんも、成長していってるのは知ってるのですよ。ずっと見ていたのですから。頑張ってるのを知ってるのですから。
「……れんちゃん馬鹿だから無理してないといいなあ」
無理してるんだろうなぁ、馬鹿だから。
「……うん」
ほんと、馬鹿なんだから。
痛む手をさする。…僅かに、痛みが薄れていくような錯覚。妖怪の身は、ゆっくりと傷を癒していっている気がした。おそらく幼馴染の馬鹿を思い出して、馬鹿がうつって、意識が前向きになれたからだろう。
――桜華はぼんやりと上を見る。
いつか幼かったころ。成長しない身体で、家の庭を眺めていた。柵を超えて入ってきたボールを、落ちてゆく様子も眺めていた。
どうしようかな、と戸惑っていると柵の向こうに男の子が二人。あの子たちのだろう、桜華はボールを取りに行って、渡そうとして。
「遊ぼうよ!」
ありがとうより先に遊ぼうよとか初対面で言われるあたり、子どもでしたよねぇ。
戸惑いはしたが桜華は反射で頷いてしまって、それから今に至る仲だ。
遊ぼうよと言ったのはどちらだ。両方かもしれない。どうでもいい、二人が友達なのに変わりはない。
「ふふ」
痛みより可笑しさが。
また会ったら昔を思い出したと話そう。
奏海は嫌がりながら思い出の補足をしてくれるだろうし、蓮爾は笑いながらとぼけるだろう。
彼らの背を、自分はまだ眺めていたい。
桜華は上を見上げている。
静かに。今は傷の回復を待つ。
また、彼らと会う為に。
* * * * * *
◆◆エピローグ:佐々浦奏海◆◆
――一度バランスを崩した日常は、なかなか元には戻らない。
いつもやって来ていた幼馴染の馬鹿二人が、西京メトロ事故以降、ぱったりと姿を見せなくなった。
連絡までよこさねえとはどういうこった。馬鹿だから仕方ねえのか。
くそ、と舌打ちをする。ラヂオから定期的に流れてくるのは事故の報道だ。
あれから二、三…何日たった。カレンダーを見るとたいして経っていないはずなのに、奏海にとっては一週間か一ヶ月も過ぎたように感じる。
りいいいいいいん。駄菓子屋ではなく家の方の呼び鈴が鳴った。
――電話かよ。
奏海は舌打ちひとつを残し、乱雑にスリッパを脱ぎ、居間に続く障子を開け放つ。
「はい。佐々浦――…。…白蓮院の。ご無沙汰しています」
電話は白蓮院の家、桜華の母からだった。電話の向こうの声、連絡できなくてごめんなさいね、と謝る品の良い婦人の声は、泣き疲れて枯れていた。
ざわり。奏海の心のうちに、考えるのを避けていたものがよぎる。
「…桜華が…!?」
「…でね、大変だったのですよ」
「そうか。僕も大変だったぞ!」
某病院の待合室。桜華の包帯姿が痛々しいが、表情は和やかだ。
桜華はメトロ事故の怪我が完治してはいないが、歩ける程度には回復したため、病院側が漸く退院許可を出した。蓮爾は単に救出の手伝いに回っており、今は休憩中なので桜華の様子を見にきたらしい。
この数日ろくに寝ていないのと、救出の手伝いで疲れているだろうに。桜華は蓮爾の気遣いに、言葉にはせず感謝していた。
「奏海になかなか連絡できないのがもどかしいな」
「そうですねえ」
大規模な事故故、情報は正しいものも誤ったものも錯綜して雪崩れ込む。故に、安易に外部と連絡がとれない。公務員の悲しい勤めだ。だが桜華は帰宅許可が出たのでさあ知らせようと意気込んだら、駄菓子屋"木須"には誰もいなかった。
「…奏海はどうしてるんだろうかな」
蓮爾がため息をつくと、桜華があ、と小さく声をあげる。
つられてそちらを見れば。
「……、……」
普段の甚平ではなく、一般的な社会人のような姿格好でありながら、常に外さぬ彼の個性――グラサンが相変わらず成人男性notカタギという印象をキメてしまう。
普段の彼らしくもなく、肩で荒く息をつき。
普段の彼らしくもなく、グラサンを外した。
――色素の薄い、黄金の瞳。眉間の皺がよりいっそう深くなる。
彼の三白眼は桜華と蓮爾の姿をとらえると、荒れた呼吸を整えもせず、ずかずかと躊躇い無く向かってくる。
――すごく怒ってる…!
桜華と蓮爾は思わず身構えた。ああいう奏海はたいてい怒っている。
「…おい、」
「「はい!!」」
反射で返事したら声が上擦っていた。仕方が無い。こちらは蛇に睨まれたカエルなのだ。
「蓮爾、…桜華」
がばと広げられる腕。殴られるかと二人は目をつぶると、
「…無事か」
奏海に、まとめて抱きしめられていた。
「……無事かよ」
掠れた声。ぎゅう、と力を込められるが痛いとは言えない。
…不安だったのですね、かなちゃん。
桜華は奏海の腕にわずかに甘え、
「ははは奏海どうしたたった数日会ってないだけで、あっ痛!痛い、痛、ちょ、ギブ!ギブだ奏海!」
場を和ませようとフザケた蓮爾を、奏海は器用に締め上げる。
…れんちゃんほんと空気読まないっていうか読んでてもこうっていうか。
「かなちゃん」
「……んだよ」
「ただいま、です」
「おかえり」
いつ、昔話をしようかな。
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