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今年も、夏は暑い。
 この時期は自然と冷たいものが売れてゆくので、商売繁盛が信条ではないものの品切れさせてはイカンだろうと、奏海はラムネやアイスを多めに仕入れるようにしていた。
 おつかいの駄賃やお小遣いを握り締めて、暑い暑いと言いながらやってくる子供たち。奏海の店にやってくるなり、これがいいあれがいいと騒ぎながら冷蔵ケースに群がる。
 中が温くなる前に選べよとは言うが、目を輝かせてアイスを選ぶ子供らを見ると、あまり強く言えない。
「毎度~」
 お得意様のラッシュはお天道様が元気な間。
 こんな暑い中、外で遊ぶことのどこが楽しいのがよくわからないが、体は冷やせよと子供らの背に言っておく。
 さて。
 夕刻にさしかかれば客は少なくなる。
 多めに仕入れたアイスもだいぶ買われていった。やっぱ人気はバニラかねえ、シンプルだし甘いし、とケースの中を見ていると。
「暑いねぇ奏海はん」
「…そうだな」
 不意に声をかけてきたのは、桜華の友人である少女だ。手をうちわ代わりにして扇いでいる。
 ――彼女が覚えているかは知らないが、数年前、喧嘩にあけくれていた奏海が巻き込みかけ――奏海自身の能力が、きちんと発動したきっかけの少女でもある。
「桜華はどうした」
「なんや学校でやる事があるとかで。奏海はんに、今日は来れんけど心配せんでねーって」
「そうかよ」
 心配なんぞ誰がしてやるか馬鹿。
 そんな思考を察してか、少女は素直やないねえとくすくす笑う。
 るせえよと言いかけて少女を見れば、暑さに負けているのか、わずかに頬が赤い。
「毎日、暑い日が続くねぇ」
 冷ケースをあさる。子供らが好んで買っていくのは、一本単位で買えるアイスバーが多い。
「奏海はんもお店おるからて気ィ抜かんでね。冷たいもんとってな?」
 二本セットのアイスは人気ねえよなあ。奏海は一袋それを取り出すと、ビリ、と破る。
「奏海はん?」
 ぱきりと割られるソーダのアイス。うち一本を、少女に差し出した。
「おら」
「え? …あ。いけんよ奏海はん、それ、売り物」
 うるせえなあとは言葉にせず、差し出してないほうの一本に噛り付く。爽やかなソーダ味が口の中に広がった。
「気ィつけろっつったのお前だろ」
「奏海はん」
「溶けちまうなー。勿体ねえなぁー」
「…もう」
 少女は仕方ないなぁと苦笑して、アイスを受け取った。 
「美味ぇよなあソーダ」
「美味しいねぇ」

 夏はまだ、続きそうだ。


* * * * * * *
 少女:NPC的な。人間で関西弁。おとなしい高校生。
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