◆◆西京project用ブログ◆◆腐向け・女性向け表現アリ◆西京参加者様に限りリンクフリー◆
[PR]
[ ]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
+ + + + +
…ところで俺はここ二十数年、まともな恋愛をしたことがない。
恋愛というのは修行上邪魔であり雑念を自ら呼びこむとはなんたる事かと養父と養母にキツく言われていたのもある。義兄も似た育成環境にあったのだが、決まって三十秒ほど思考してから「うちはうちよそはよそ」と言うので右に倣った。
なので同期から、
「…禁欲したらガタイよくなるの」
と、まじまじ見られたがそれもどうだろうか。自覚はない。男性特有の下腹が重くなって云々、というのも筋トレだ警邏だと動くことで忘れてしまう。
「…ああ…だからこんな残念な子に…」
同期はどっから取り出したか白いハンカチを目にあてて泣き真似をした。失礼な奴だ。
そんな俺だがここ最近、やけに気になる奴ができた。そいつは喧嘩に弱いくせにトラブルに巻き込まれるし、むしろトラブルに発展させるある種の才能がある奴だ。その割りに楽しんでる様子もない。
「どう思う、各務」
「えー…と、生きるのに不器用っぽい人…かな?」
同意だ。
「不破はその子をどうしたいの」
「どーもこーも無ぇよ、ただ、怪我が」
「怪我が?」
あいつの真っ白な肌を思い出す。
「…怪我が、なきゃいい」
喧嘩になるとあいつの細い腕なんか簡単に動きを封じられて、
「…痕とか、残っちまうし」
それで壁に押し付けられれば自然、抵抗するし、もがく。そうしたら服が乱れて胸元が少し見えたりして、
「…見えんのは嫌だ」
ふと気づけば各務がとてもヌルッとした目で俺を見ていた。
「……不破。その子で身勝手に妄想するとかすっごく失礼だからね?」
「違ぇよ、今までの行動からの推測と結果だっつの」
「視点が妄想の域だ、ばか!」
そうなのか。
「相手の子、苦労するな…」
そうなのか…
「なら俺ぁ、かまいに行くのやめた方がいいのか」
「極端だな。違うよ、ただ、相手に迷惑かけないようにしなよ」
「多分かけてねぇ」
「かけてるやつほど即答するんだよ…」
そうなのか…!
「各務は物知りだな」
「不破が知らなすぎるんだ。…あー、もう」
あああ、と各務が頭を抱える。そう言いつつ、こいつはどうしたらいいだろうねと親身になってくれるいい奴だ。
「各務」
「なに」
「俺といたら疲れるか?」
「疲れるけど。…フツー真っ向から聞かないよね其れ。思ってても秘めてそれなりに様子うかがうよね?」
そこまで一気にまくしたててから、不破のおつむじゃ無理かと再び頭を抱えさせてしまった。
なんかすまん。
「ともかくさ。気に、なるんだよね?」
「ああ」
「どういうところ? あ、外見からくる意見と行動の推測はいらない」
「そうだな…」
また、そいつを思い浮かべる。
警邏中に目があってはそっぽを向かれ、悪態をつかれ、もうかまうなと全身で拒否されているようにも思えるそいつの事を。
ぶつけられる言葉は拒否だったり拒絶だったり、酷ければ暇人、と言われたりで、
「…ただ」
出雲京で受けた修練の中には、ひとの真意を汲むものがあった。それは苦手な修練のひとつで、よく義兄の手を焼かせていたんだが。
――人の声と、心の声が一致しないときがある。悪いものに唆されていたり、生まれつきだったり、人それぞれではあるけれど。そんな声に気付くことから始めなさい、仁定。
そういった声は耳に、不協和音として響く。それを覚え、留め、慣れていくことも、憑き物落としには必要な技能だと。墨染家が無くなってしまってから途中で切り上げられた修練は数あれど、それをこなせば良かったと後悔している。
「…あいつの本意は時々、違うんじゃねえかな、って引っかかるんだ」
「……そっか」
また、各務の俺を見る目がヌルい。
「ところで不破。いつもの時間じゃないの」
「そうだった」
腕時計で時刻を確認して立ち上がる。悪ィ各務、また今度、と缶コーヒー代を握らせて休憩所を飛び出した。
「がんばれー」
微妙にやる気のない応援を背にうけながら。
いつもの場所。いつもの時刻。
いつも通りにいる彼に、警邏の途中だからという体で声をかけると、予想通り暇人と言われてしまった。
けれどその声と、潜む音に、ほころびのような違和感を知ったのは漸くの事。
妙なくすぐったさを感じながら、俺はきっと明日も此処に来る。
その違和感を理解しても、きっと。
…ところで俺はここ二十数年、まともな恋愛をしたことがない。
恋愛というのは修行上邪魔であり雑念を自ら呼びこむとはなんたる事かと養父と養母にキツく言われていたのもある。義兄も似た育成環境にあったのだが、決まって三十秒ほど思考してから「うちはうちよそはよそ」と言うので右に倣った。
なので同期から、
「…禁欲したらガタイよくなるの」
と、まじまじ見られたがそれもどうだろうか。自覚はない。男性特有の下腹が重くなって云々、というのも筋トレだ警邏だと動くことで忘れてしまう。
「…ああ…だからこんな残念な子に…」
同期はどっから取り出したか白いハンカチを目にあてて泣き真似をした。失礼な奴だ。
そんな俺だがここ最近、やけに気になる奴ができた。そいつは喧嘩に弱いくせにトラブルに巻き込まれるし、むしろトラブルに発展させるある種の才能がある奴だ。その割りに楽しんでる様子もない。
「どう思う、各務」
「えー…と、生きるのに不器用っぽい人…かな?」
同意だ。
「不破はその子をどうしたいの」
「どーもこーも無ぇよ、ただ、怪我が」
「怪我が?」
あいつの真っ白な肌を思い出す。
「…怪我が、なきゃいい」
喧嘩になるとあいつの細い腕なんか簡単に動きを封じられて、
「…痕とか、残っちまうし」
それで壁に押し付けられれば自然、抵抗するし、もがく。そうしたら服が乱れて胸元が少し見えたりして、
「…見えんのは嫌だ」
ふと気づけば各務がとてもヌルッとした目で俺を見ていた。
「……不破。その子で身勝手に妄想するとかすっごく失礼だからね?」
「違ぇよ、今までの行動からの推測と結果だっつの」
「視点が妄想の域だ、ばか!」
そうなのか。
「相手の子、苦労するな…」
そうなのか…
「なら俺ぁ、かまいに行くのやめた方がいいのか」
「極端だな。違うよ、ただ、相手に迷惑かけないようにしなよ」
「多分かけてねぇ」
「かけてるやつほど即答するんだよ…」
そうなのか…!
「各務は物知りだな」
「不破が知らなすぎるんだ。…あー、もう」
あああ、と各務が頭を抱える。そう言いつつ、こいつはどうしたらいいだろうねと親身になってくれるいい奴だ。
「各務」
「なに」
「俺といたら疲れるか?」
「疲れるけど。…フツー真っ向から聞かないよね其れ。思ってても秘めてそれなりに様子うかがうよね?」
そこまで一気にまくしたててから、不破のおつむじゃ無理かと再び頭を抱えさせてしまった。
なんかすまん。
「ともかくさ。気に、なるんだよね?」
「ああ」
「どういうところ? あ、外見からくる意見と行動の推測はいらない」
「そうだな…」
また、そいつを思い浮かべる。
警邏中に目があってはそっぽを向かれ、悪態をつかれ、もうかまうなと全身で拒否されているようにも思えるそいつの事を。
ぶつけられる言葉は拒否だったり拒絶だったり、酷ければ暇人、と言われたりで、
「…ただ」
出雲京で受けた修練の中には、ひとの真意を汲むものがあった。それは苦手な修練のひとつで、よく義兄の手を焼かせていたんだが。
――人の声と、心の声が一致しないときがある。悪いものに唆されていたり、生まれつきだったり、人それぞれではあるけれど。そんな声に気付くことから始めなさい、仁定。
そういった声は耳に、不協和音として響く。それを覚え、留め、慣れていくことも、憑き物落としには必要な技能だと。墨染家が無くなってしまってから途中で切り上げられた修練は数あれど、それをこなせば良かったと後悔している。
「…あいつの本意は時々、違うんじゃねえかな、って引っかかるんだ」
「……そっか」
また、各務の俺を見る目がヌルい。
「ところで不破。いつもの時間じゃないの」
「そうだった」
腕時計で時刻を確認して立ち上がる。悪ィ各務、また今度、と缶コーヒー代を握らせて休憩所を飛び出した。
「がんばれー」
微妙にやる気のない応援を背にうけながら。
いつもの場所。いつもの時刻。
いつも通りにいる彼に、警邏の途中だからという体で声をかけると、予想通り暇人と言われてしまった。
けれどその声と、潜む音に、ほころびのような違和感を知ったのは漸くの事。
妙なくすぐったさを感じながら、俺はきっと明日も此処に来る。
その違和感を理解しても、きっと。
PR
◆◆◆ Comment
プロフィール
HN:
たかや
性別:
女性
自己紹介:
!!CAUTION!!
女性向け表現あり。
女性向け表現あり。
フリーエリア
最新記事
(06/01)
(12/31)
(08/17)
(08/07)
(08/01)
P R