◆◆西京project用ブログ◆◆腐向け・女性向け表現アリ◆西京参加者様に限りリンクフリー◆
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◆◆深國充◆◆
◆◆不破仁定◆◆
◆◆名前のみお借りしています◆千為さん宅:比良坂絹子さん◆◆
◆空木一路さん◆◆
◇第参回公式イベント『荒神帝国』◇
◇千為さんの作品『The Little Tramp』の流れを一部拝借しています◇
◆◆不破仁定◆◆
◆◆名前のみお借りしています◆千為さん宅:比良坂絹子さん◆◆
◆空木一路さん◆◆
◇第参回公式イベント『荒神帝国』◇
◇千為さんの作品『The Little Tramp』の流れを一部拝借しています◇
+ + + + +
わたしはぶきをもっていた。
護身用の刀を。前世ならば銃を。
しかし、それらを使うことなく、大事なものが奪われていった。
前世では愛を押し付けた妻が強制的に送還させられ、……。
現世では愛を捧げた幽霊のひとが強制的に成仏させられた。
……ミリア。
………絹子、さん。
ミリア。ミリア。赤褐色のお下げ髪の兵士。略奪された村の、略奪物のひとつであり、武器を持たされ、兵士たちの妻となることを命じられ、私に充てがわれた妻のひとり。
故郷の許嫁に似ていたから、正気を喪っていた私は、妻を、かつての許嫁の名、ミリアと呼んだ。
ミリア。きみを連れて逃げて、逃げきれず、捕らえられた時、わたしはなにもできなかった。
絹子さん。あなたの思想を理解せぬ暴徒が押し入り、あの忌まわしい装置を発動させた時も、わたしはなにもできなかった。
いつも、いつも。踏み出すべき一歩に足を竦ませている。
「……程々に、しておきなさい」
無人の舞台でパントマイムを続ける一路青年にそっと声をかけ、充は見回りに戻った。かしゃりと、携えた護身刀がコートの裾にあたって音をたてる。
もう非常灯の明かりさえつかぬ道であっても、充は迷うことなく歩く。
天照国の藝術、大衆の娯楽の一つを担っていた筈の此処は――その役割を放棄させられた天照劇場は、今宵も、かつての主の歌声が響いていた。
目を閉ざすことはできても、耳を閉ざすことはできない。
可憐そのままの歌声は、ときに充の心を慰め、ときに責めた。
わたしは無力。
わたしは愚鈍。
わたしは腑抜け。わたしは、
「此処を守ります。支配人」
以前は枯れる前にと新しい花束を買って置いていたが、今では叶わない。貴女のデスクに、せめともと、代わりの枯れぬ花を飾り。
「貴女の消えた日を留め続けます」
私は武器を持っている。
私に時はながれない。
後悔だけを、胸に秘めて。
「…深國、さん」
「不破さんですか。…彼ならいつもの所です」
「はい」
赤髪の青年は、深國に頭を下げてからホールへ向かった。此処へ来たなら先ず、深國に声をかけるのが不破のきまりごとだ。一路を探してやってきた時は、特高だったというだけで本気で斬りかかられ、肝を冷やした事がある。
「(その気持ちが、分からねえわけじゃねえしな)」
深國は失ってしまったが、不破は失わずに済んだものがある。
――嘘ばかり吐く二枚の舌と、歯のほとんどを失う私刑に遭って、ぎりぎりで、命をとりとめて。
「(一路、あのバカ、またやってんのかよ)」
がさりと手にしたビニル袋が揺れた。特高を辞め、配給品を絶った今、日銭を稼ぐ日々が続いている。もう二度とあの特高制服に身を包むつもりもなければ、荒神に頭を垂れるのも御免だった。
失いたくないと願った人を傷つけたのは、不破が所属していた特別高等警察だった。
彼にとって誇りである、尽くすべき国が姿を変えてしまった今、彼のなかの天秤は音をたてて壊れてしまった。
――いつか、お前も見えちまう日がくるさ。不破の家と、歪んじまったお前自身がね。
いずれこの方に仕えるのだと決めていたひとも、もう死んでしまった。巷に現れる刀使いの通り魔ではなく、捕えた者を調理して食う猟奇殺人犯の手にかかったと聞いた。
護りたいものが次々とこの手をすり抜けていくから。
空っぽになりかけていた自分に、最後に残った縁は、彼しかいなかったから。
「一路」
舞台の上で、寄せ集めの衣装を身に着けて、彼は独り戦い続けている。
こちらの姿を見て演技を止めようとする彼に、苦笑して首を振った。…続けろ、と。
客席の、まだ座れるところを探して、どかりと座る。不破の大きな身体が体重を預けると軋んだ音をたてたが、椅子は久々の客を受け入れてくれた。
なあ一路。俺も、此処を護っていいだろうか。
おまえを、おまえの誇りを護っても、いいだろうか。
横に置いたビニル袋から整髪料のスプレー缶や、髪留めなどがちらりと見える。
孤高にそうして戦う彼を、その舞台を、――いまや藝術の墓と揶揄されるこの劇場を護ることが自分の戦いであり、正義だと。
不破は、静かに覚悟を決めた。
* * * * *
第三回公式イベント『荒神帝国』
・深國充:天照劇場の補修をしつつ墓守をしています。陰鬱オーラに磨きがかかりました。
・不破仁定:色々あって悩んだ結果、一番縁のつよいものを護る決意を固めました。天照劇場で守人をしています。なんかふっきれてます。
わたしはぶきをもっていた。
護身用の刀を。前世ならば銃を。
しかし、それらを使うことなく、大事なものが奪われていった。
前世では愛を押し付けた妻が強制的に送還させられ、……。
現世では愛を捧げた幽霊のひとが強制的に成仏させられた。
……ミリア。
………絹子、さん。
ミリア。ミリア。赤褐色のお下げ髪の兵士。略奪された村の、略奪物のひとつであり、武器を持たされ、兵士たちの妻となることを命じられ、私に充てがわれた妻のひとり。
故郷の許嫁に似ていたから、正気を喪っていた私は、妻を、かつての許嫁の名、ミリアと呼んだ。
ミリア。きみを連れて逃げて、逃げきれず、捕らえられた時、わたしはなにもできなかった。
絹子さん。あなたの思想を理解せぬ暴徒が押し入り、あの忌まわしい装置を発動させた時も、わたしはなにもできなかった。
いつも、いつも。踏み出すべき一歩に足を竦ませている。
「……程々に、しておきなさい」
無人の舞台でパントマイムを続ける一路青年にそっと声をかけ、充は見回りに戻った。かしゃりと、携えた護身刀がコートの裾にあたって音をたてる。
もう非常灯の明かりさえつかぬ道であっても、充は迷うことなく歩く。
天照国の藝術、大衆の娯楽の一つを担っていた筈の此処は――その役割を放棄させられた天照劇場は、今宵も、かつての主の歌声が響いていた。
目を閉ざすことはできても、耳を閉ざすことはできない。
可憐そのままの歌声は、ときに充の心を慰め、ときに責めた。
わたしは無力。
わたしは愚鈍。
わたしは腑抜け。わたしは、
「此処を守ります。支配人」
以前は枯れる前にと新しい花束を買って置いていたが、今では叶わない。貴女のデスクに、せめともと、代わりの枯れぬ花を飾り。
「貴女の消えた日を留め続けます」
私は武器を持っている。
私に時はながれない。
後悔だけを、胸に秘めて。
「…深國、さん」
「不破さんですか。…彼ならいつもの所です」
「はい」
赤髪の青年は、深國に頭を下げてからホールへ向かった。此処へ来たなら先ず、深國に声をかけるのが不破のきまりごとだ。一路を探してやってきた時は、特高だったというだけで本気で斬りかかられ、肝を冷やした事がある。
「(その気持ちが、分からねえわけじゃねえしな)」
深國は失ってしまったが、不破は失わずに済んだものがある。
――嘘ばかり吐く二枚の舌と、歯のほとんどを失う私刑に遭って、ぎりぎりで、命をとりとめて。
「(一路、あのバカ、またやってんのかよ)」
がさりと手にしたビニル袋が揺れた。特高を辞め、配給品を絶った今、日銭を稼ぐ日々が続いている。もう二度とあの特高制服に身を包むつもりもなければ、荒神に頭を垂れるのも御免だった。
失いたくないと願った人を傷つけたのは、不破が所属していた特別高等警察だった。
彼にとって誇りである、尽くすべき国が姿を変えてしまった今、彼のなかの天秤は音をたてて壊れてしまった。
――いつか、お前も見えちまう日がくるさ。不破の家と、歪んじまったお前自身がね。
いずれこの方に仕えるのだと決めていたひとも、もう死んでしまった。巷に現れる刀使いの通り魔ではなく、捕えた者を調理して食う猟奇殺人犯の手にかかったと聞いた。
護りたいものが次々とこの手をすり抜けていくから。
空っぽになりかけていた自分に、最後に残った縁は、彼しかいなかったから。
「一路」
舞台の上で、寄せ集めの衣装を身に着けて、彼は独り戦い続けている。
こちらの姿を見て演技を止めようとする彼に、苦笑して首を振った。…続けろ、と。
客席の、まだ座れるところを探して、どかりと座る。不破の大きな身体が体重を預けると軋んだ音をたてたが、椅子は久々の客を受け入れてくれた。
なあ一路。俺も、此処を護っていいだろうか。
おまえを、おまえの誇りを護っても、いいだろうか。
横に置いたビニル袋から整髪料のスプレー缶や、髪留めなどがちらりと見える。
孤高にそうして戦う彼を、その舞台を、――いまや藝術の墓と揶揄されるこの劇場を護ることが自分の戦いであり、正義だと。
不破は、静かに覚悟を決めた。
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第三回公式イベント『荒神帝国』
・深國充:天照劇場の補修をしつつ墓守をしています。陰鬱オーラに磨きがかかりました。
・不破仁定:色々あって悩んだ結果、一番縁のつよいものを護る決意を固めました。天照劇場で守人をしています。なんかふっきれてます。
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女性
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